堀道広さんマジック
新刊『昭和式もめない会話帖 (中公文庫)』のイラストは、堀道広さんです。当初から、編集者の石川由美子さん(中央公論新社)から、「絶対この方がいいと思いますっ」という熱い思いがビンビン伝わってきていた。
もちろん私もお願いしたいと思ったし、だいたいそういう編集者の思いが溢れんばかりのときは、それにのるのが最善で、いい結果になると、これまでの経験でわかっている。
果たして、堀さんは、小津安二郎や成瀬巳喜男、黒澤明の映画のフレーズを、それはもう見事に自分流に解釈して、シュールにイラスト化してくださった。上がってくるラフがこんなに楽しみだったのも久しぶりだ。
本書は『昭和ことば辞典』(ポプラ社 2013年)を加筆して文庫化したものだが
イラストを通して、本が生き返った思いだった。
言葉は、ときに、時代に応じて解釈を変え、死んだり、生き延びたりする。
堀さんの解釈で、
「いい女ですね。食欲が湧く」
「吹くわね、坊やのくせに」
などというセリフが、いきいきと、息を吹き返すのをまのあたりにして
リインカネーションという言葉を思い出していた。