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書きかけの手紙


 9日間の留守から戻ると、書きかけの手紙がちゃぶ台にあった。 娘の字で、 「父に1週間弁当を作ってもらいましたが、彩りもよく、無理なく野菜もとれてとてもおいしかったです。育児分業という言葉はご存じでしょうか。提案ですが、忙しい母は仕事に専念していただき、これからは」 という内容でおわっていた。  その先はきっと、「父が弁当を作ってはどうか」だ。 「あのさ、すごく丁寧に、あたかも母のことを気遣った新提案のように書いてるけど、要は、私の弁当まずい。パパに交代してってことだよね?」と確認すると「ちがうちがう、ママが大変かなあと思って」と言うが、顔にその通りと書いてあった。  弁当作り8年。なんだったら弁当の本(

おかあさんのおべんとう―母弁)まで出したことがある。なかなかのこの屈辱、どうしてくれよう。  たまに作るのと、8年間毎日とは、モチベーションが違うのだ。しかしもうこの際、私も楽をしたいので、「この提案いいと思う。あと1年だし、せっかくだから作ってみたら?」と夫に全力で推したら拒否された。  いったい何をおかずにしたんだと冷蔵庫を開けたら、石井のハンバーグや真空パックのミートボールとかがわんさかあった。こいつらに負けたのかあああと遠い目になった。

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