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烏色にとまどうの記

  • 執筆者の写真: kazue oodaira
    kazue oodaira
  • 2014年2月27日
  • 読了時間: 2分

高校の謝恩会と大学の入学式に着るというので、息子のスーツを買うのに同行。 怖ろしいほど、店全部がグレーと黒に染まっている。 まつげのエクステをびっしりつけた店員のお姉さんは、「就活は黒以外はありえません」ときっぱり助言してくださった。それはいつ、だれが決めたんだ?と思いながら、「いえ、就活じゃないんですけどね」と小声でぼそぼそ。 しかしまあ、どれを見ても黒、紺、黒、ときどきグレー・・・。 そのお姉さんは悪くないのに、だんだんこの没個性的なカラス一色の制服のようなもので就活をせねばならないらしい社会に対して腹が立ってきて、「どうせ4年後にこんなつまんない服着なきゃなんだから、今は派手で面白いやつ着とこうよ」と言い、3〜4枚だけ隅にあった、ホストふうピンストライプのブルーグレーの安いスーツを買った。息子も「就活に着れないなんてもったいないじゃん」と言いつつ、それがいいとのことなので、よしとする。 接客の後半から、無口になったお姉さんが、レジで精算しているとき「お名前の刺しゅうは入れますか?250円です」と聞いてきた。「いえ、入れません。フリマで売るか、後輩にあげますので」と言ったら、「スーツはサイズもいろいろありますし、それにこれは・・・」。このデザインは欲しい人いませんよと言いたかったのだろうなあ。私がお姉さんなら、こんな客いやだ。

 
 

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