縁の下の力持ち
13年前、平凡社で出した本『ジャンク・スタイル』の営業担当だった人がMさんだ。父のような年齢のその人と、一緒に1日に何軒も書店を回った。途中でコーヒーやあんみつをご馳走してくれた。本を売ってくれる書店の方と会いたいと思い、志願して営業に付いていったのだが、学ぶことだらけだった。書店員の方は、表紙の色やタイトルのつけかたについても、シビアな意見を持っている。でも聞かなければ語らない。だから聞く。それが次の本づくりに必ず役立つ。 「○○ちゃん」と書店のお姉さんをまるで娘のようにちゃん付けで呼ぶMさん。その後定年退職されても、年に何度か下北沢などで飲むおつきあいが続いている。 今日もそんななごやかな一献の日。飲み屋に行く前に、「昔、○○書店にいた子がB&Bにいるからちょっと寄ってみよう」と言うのでお供した。地元でもちょっと敷居が高くては入れなかったのに、Mさんのうしろにくっついていくと、どんな書店もスイスイ入れて、「あっ、Mさん!」と書店員のみなさんは、みんな決まって懐かしそうな嬉しそうな顔をする。足で稼いだ人脈は、書店や立場が変わっても削除されない。B&Bでも、関係ない私まで居心地が良く、来月出る新刊についてまで話が及んだ。出版の仕事は、いろんな縁の下の力持ちに支えられているのだと、Mさんの後ろ姿が教えてくれる。