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以心伝心

「あの、えーと、ほら、そのなんだ・・・髪の長い」 「あれね、わかるわかる。あの映画に出ていた人と離婚した、髪の長いあの人ね」 はるか遠いところから記憶をたぐりよせてもだめで、いっこうに代名詞しか出てこず、会話を一端中断。 互いにiPhoneで検索し、会話を再開することが増えた。 10分で済む話が23分かかったりする。 きのうの、飲む店を決める息子との会話では。 私「イタトマのななめむかいの、パスタ屋の並びのやきとり屋いこう」 息「は? どこのパスタ屋」 私「なんつったかな、あそこ。えーと、なんとか太郎。あ、ゆで太郎だ」 息「すぱ次郎だから、それ」 もう気持ちで察してくれたまえ。

2025 『ふたたび歩き出すとき 東京の台所』(毎日新聞出版) 発売

2024 『そこに定食屋があるかぎり』(扶桑社) 発売

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