先生の涙
息子、高校卒業式。教室で一人一人に言葉を添え、卒業証書を渡しながら、担任の先生(男性、50代)の目はだんだん潤んでいき、最後には黒板を向いて肩をふるわせて泣いてしまった。「担任をさせてくれてありがとう」といいながら。生徒も泣いていた。 痴漢とか体罰とか、教師は悪いニュースがあるとすぐ取りざたされるが、その何千倍、何万倍ものいい先生が全国にごろごろいて、けれども、どんなにすごい熱意で、いい教育をしても、それはニュースにはならない。こんな、終わりのない、はてしなくしんどい仕事はないと思うが、日本の教育は、こういう市井の一人一人の先生の努力と情熱によって支えられていることを忘れちゃだめだと、今日しみじみ思い知った。 この先生は、息子がケガで入院したとき、授業が遅れたらかわいそうだからと、公務が終わってから、教科書を持ってたったひとりに教えるために遠い病院まできてくれたのだった。そのとき、先生と話したことがきっかけで、息子は進路を決めた。 良い師と友に巡りあえた彼の幸運に心の中で感謝しながら、二度とくぐることのないであろう校門を出た。 6年通わせると情が移る。生徒でもないのにこちらまで泣けてきた。
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