編集者魂
『dancyu』送別会。
編集長と副編集長が退かれるということで、新日本橋べったらスタンドで、盛大な宴が催された。ずっとずっとずっと仕事部屋に生息していたので、久しぶりに娑婆の空気を味わう囚人のようであった。
個人的には、芥川賞作家の藤原智美さんに、影響を受けたご著書『「家をつくる」ということ』の感想をお伝えできたことが、今日のたくさんある至福のひとつである。
『dancyu』の副編の神吉佳奈子さんは、自分のライター人生で、最もたくさんの書き直しを命じられた編集者だった。つい最近でも、一晩で4回書き直した。
もうこれでいいだろう、と思っても夜中2時に「まだちょっと、大平節が出てません」とメールが来る。
そういう編集者は、絶滅危惧種寸前なので
私は、書き直しを言われれば言われるほど、燃えに燃える。
書き直しを晒すとは、プロとして恥ずかしい話しだが
真実だし、あえて書く。
そして彼女は体が壊れるほど仕事をして
編集者人生を卒業して、まったく新しい道を歩き出すという。
ある日、彼女と仕事をしてきたナカムラグラフのデザイナーと別のパーティで会い
「明日校了、という日でもおかまいましに直しを命じる。その高みを目指すしつこさが好きで、応えたくなる(もちろん自分の不甲斐なさを恥じながら)」と話したら
「私も全く同じ気持ちです」と
意気投合した。深夜2時だろうが3時だろうが、彼女に「素晴らしい!オッケーです!」と言わせたい一心で、がんばるという。
たとえば、そういう労働状態を文字にすると、ブラック企業というか、法からはみでることになる。
でも、ものづくりをする人間は、時間とお金ではない別の次元のものさしで
がむしゃらに働かねなばらない場面が、どうしたってある。
夜中に働くことがいいことだとは思わないし
フリーランスの権利向上のためにも
礼賛するつもりはないが、
神吉さんと仕事をした仕事はすべて、自分の中でキラキラ輝いている。
あのキラキラに名前をつけるなら、「達成感」だろうか・・・。
もうあんな編集者には会えないかもしれないと思うと少し寂しく
dancyu推薦の素敵な冷酒(名前忘れ)を、ガンガン飲んだ。