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郷里で涙

  • 執筆者の写真: kazue oodaira
    kazue oodaira
  • 2015年9月6日
  • 読了時間: 1分

長野県伊那市の料理のおいしい旅館、たかずや鉱泉でトークイベント。80歳の中学の恩師が自ら申し込んでかけつけてくださった。急遽、最後のひとことをお願いすると、先生はかばんから紙をとりだして読み上げた。 高校進学時の内申書の下書きだった。 「本人は文筆で身を立てたいと考えており、卓越した作文能力と強い意志で必ずや夢を実現するであろう。貴校への入学を強く推薦する」 お前の日記よかったぞ。今日の作文は抜群だった。毎日毎日3年間褒め続けてくれたわたしの先生。 今日まで教え子全員の内申書の下書きをとっている律儀な先生。 帰り際、玄関で「あ、そういえばひとこといっておくな」とふりかえった。 「生き急ぐなよ。ゆっくりいけ。体を大事にしろな」 それからずっと、私の頭の中にRCの『僕の好きな先生』が流れている。

 
 

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