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18の春

息子、大学合格。男女が仲良く、みんなやたらにおしゃれでキラキラ楽しそうな附属高校に通う彼が、3年の春、「内部進学辞退届」を出すと言ったあたりから、少しだけど確実にぴりぴりした空気が家庭の中にずっと流れていた。辞退届も書くのが怖くて、私は見ていない。 たがいにイライラ、目が合えば「大学の話はしないで。俺が決めることだから」と心のシャッターを下ろされる日もあった。滑り止めもなく、その大学のAOに落ちたら同じ大学の一般を受けて、落ちたら来年もその学校を受けるという。そんなリスクだらけの受験になぜしなければいけないのか。もうちょっと安全な道探そうよ、という言葉を胸にしまったまま、がんばれとだけ言い続けるのはちょっとしんどかった。口では「自由に。好きな道を」といいながら、どっかで安全パイを確保させようとする。ずるい自分が見えた。親業は難しい。そういういろんな迷い道をくねくねしながら、今日なんとか小さな春が来て、いよいよ自分の人生を歩き出すのだなと思ったら胸がいっぱいになった。嬉しいけどさみしい。私の父母も、こんな気持ちだったのかな。

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