或る店
たか(渋谷区円山町)という居酒屋ふう料理屋で、ライター二人で飲んだ。同業者と飲む機会は意外に少ないので、ひどく刺激的だった。 それにしてもこの店は面白すぎた。まず、席に座るなり山のような注意事項を言い渡される。トイレでゲロを吐くなとか、きれいに使ってくれとか、日本酒を1杯飲んだら3口は水を飲んでくれ、それが悪酔いしない方法だとか。たかさんは若めのお兄ちゃんだが、精神年齢は89歳くらいだ。不思議な店で、料理はおまかせのみ。日本酒は無料。ビールは3杯目から1杯200円(だった気がする)。 日本酒は、料理に合わせて1杯ずつたかさんが選んでくれる。そのセレクトが絶妙で、日本酒ってこんなにおいしいものなのかと感激させられる。酒の3倍水を飲みながらなので、本当にどんなに飲んでも悪酔いをしない。料理は魚介のみで、銀座でも勝負できる味だ。 つまり、酒と料理がすごくおいしくて、すごく店主のウンチクが長い店。客が皆気を使っているのがわかるのだが、それも自らすすんで気をつかっている感じで、強制感はない。あの店で一番偉いのは、客ではなくたかさんだ。それでいいと思わせる、濃厚なオーラがたかさんにはある。 ラブホテル街の地下にある、不思議な料理屋たかは完全予約制。おいしいもの好きで気が長い人だけが常連になれます。
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