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転機


 随筆家で家事評論家の吉沢久子さんが、 101歳で鬼籍に入られた。  『新潟日報』に50年、連載を続けた。 家事という同一のテーマで、50年!  連載時、自分のお金で新潟日報を購読していると、ご本人から聞いた。  版元から送られてくるのに何故ですか?ときくと 「投書欄を読むためです」。  献紙は、執筆の回しか恵贈されない。  愚問だった。  投書を読めば、新潟の人の「いまの暮らし」がわかる。 中央にいるだけでは見えないものが必ずあると、つねにおっしゃっていた。  わたしは台所を取材して6年目になる。  恥を承知で告白すれば飽きかけた時もあったし、予定調和で雑にまとめた時もなくはなかった。  吉沢さんの言葉をきいて、とても恥ずかしくなった。どこかで知った気持ちになって、書いていた。  間違い無く、吉沢さんこの言葉は、自分の仕事の姿勢を変える大きな転機になった。  『暮しの手帖』をはじめいくつかの雑誌で取材。  拙著『あの人の宝物〜人生の起点となった16の物語』(誠文堂新光社)で、 聞き足りなかったことをたくさん伺えた。  90代になられても、どれだけ聞いても疲れた顔一つ見せず 真摯に質問に向き合ってくださった 日本で最初の「家事評論家」。  書き手としての姿勢に胸打たれた、 人生の先達である。合掌。

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